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2009
04.09

正面切り

Category: 未分類
四七 覚悟を手に入れる 

野球部仮入部、屁理屈屋太郎の回想。

キャッチボールの基本は胸で受ける、だべ。
そんなこたぁ、俺でも知ってる。
けんど、これが難しい。
怖いんだよ、正面て。当たったら怪我するし。
だから、すっとからだを横にずらす。
本能だ、本能。
先輩は「逃げねで、もっと正面で!」って怒鳴る。
一応「へい」って返事するけんど、球が来たら、また逃げるごてね。
だって怖いんだから。

だいたい正面って受けにくいもんなんだよ。
いろんなスポーツ考えてもすぐ分かっぺ、そんなこと。
卓球だって正面がウイークポイントって言われているし、ボクシングでもまん前に真っ直ぐ伸びるパンチはよけにくい。

なにボーっとしてるって先輩はごしゃく。
「正面で受けたらバランスいいし、次の動作がしやすべした!」
先輩も理屈好きなだ。
俺は言った。
「正面で受ければエラーしても球が体に当たって後ろに転がっていかないって、先輩、昨日言ったべ。それって、原始的で過酷で単細胞な発想でねえが。
人の眉間から金的の間の縦のラインを正中線っていうの知ってっか。そこには鼻、人中、喉、、心臓、鳩尾、臍など急処が密集しているんだぞ。一撃必殺の場所だ。
ドッチボールでほっぺたに当ったときと鼻の頭に当ったとき、全然違うぺよ。
こんな急処ばっかりの正面で受けるって不自然だべ。ちょっとくらいずらした方が理にかなってるした!」
ちょっと言いすぎたかなと思ったげんど、先輩はにんまりしったった。
「お前こそ、知ってっか。正面切るっていう言葉をよ。
開き直って真正面から堂々と突っ込んでいくってことだ。
今のお前は堂々としったか?
してねえなあ。
なんでだ。
堂々とするにはな、危険と引き換えにしても、獲得しなけりゃなんねえものがあるんだよ。
危険以上に価値ある美徳。
なんだか分かるか。
覚悟、だべよ。覚悟が手に入るんだよ。
覚悟が手に入ると正面のほうがずっとよくなる。
今のお前には、その覚悟の片鱗も見当たらねえんだよ」

俺はグローブを捨てて、その場から立ち去ったは。
逃げたんでねえ。そこに居たくなかっただけだ。
本当だぞ。
だってよ、先輩がゴタク並べているときに、ひらめいたことがあったんだ。
どうして、バッターは4割を超えられないのか。
それが分かったんだ。それを確かめたくなったんだ。
俺はその足でバッティングセンターさ向った。
着くとすぐに、ホームベースをまたいで仁王立ちになって、バットを握った。
この状況ならば、俺のど真ん中に球が来る以外にない。
覚悟が体の奥からおのずと湧いできた。
これだったら、10割バッターも夢じゃねえした。
俺は両手で日本刀を持つようにバットを構えたごで。
全然怖くねえぞ。
バットが俺の急処を全部カバーしてくれてるしよ。
球は前には飛ばながったげんど、真剣でかっ捌くような気持ちよさがあった。

この練習はええかったなあ。
係員に、二度と来るなって大目玉食らったことを除けば。


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