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2010
03.21

命のくるま

Category: 未分類
一五七 おそろしいと思う


前を走っている車がいました。
とてもゆっくりでした。
僕は追い越しました。
簡単に追い抜けました。
けれどすぐ、その車に追い越されました。
前に鋭く割り込んできました。
そしてまた、とてもゆっくり走り始めました。

僕は腹が立ちました。
前の車から尖った音楽が洩れていました。
大きな刺青をした車でした。
そのうち蛇行を始めました。

もうすぐ山道でした。
追い抜けなくなります。
このまま後をついていくのではかないません。
僕はもう一度追い抜きました。
すきを見て、素早く抜きました。
僕はそのままアクセルを踏み込みました。

山道は大きなカーブの連続です。
僕はスピードを出したまま曲がりました。
タイヤがキキーと鳴りました。
嫌な予感がありました。
バックミラーにさっきの車が映っていました。
ぴったり後についていました。

大きなカーブにさしかかったときでした。
後の車が僕を追い越そうとしました。
山に隠れて対向車がまったく見えません。
来たら正面衝突です。
それでも後の車はセンターラインを大きく越えてきました。
そして僕と並走しはじめました。
しばらくこちらを睨みつけていました。
僕は、相手の人は死ぬのかなあと思いました。
観念しました。
前だけ見ることにしました。
やはり対抗路線は山に隠れています。
そのまま走りました。
すると、その車は爆音とともに僕を追い抜いていきました。
直後、対向車が立て続けにすれ違っていきました。
僕はブレーキをかけました。
路肩に止まりました。
しばらくボーっとしていました。

この話を店長にしました。
店長は笑みを浮かべていました。
「世の中には、車に乗ったまま死んだっていいっていう奴がいるんだよ。車に命を懸けてる奴だ。運転中に死ねれば本望だっていう奴。いるんだよ。
お前はその一人と出会ったんだ」
店長は続けました。
「お前は運がよかった。そいつのとばっちりを食わなかったからな。
巻き込まれないようにせいぜい気をつけることくらいしかできない。
結局俺たちには何も出来ないんだよ」
店長は僕の肩をポンと叩き、立ち上がりました。
「あんまり運を使わないように」

それからしばらく、僕は、車の中に命が転がっているような気分で運転していました。
何気なく走っていた道路が戦場に見えていました。
恐ろしい場所だったんだと思いました。
命懸けで運転している人たちがいる。
山道を追い抜いていった彼に、僕はちょっとだけ敬意をはらいました。


でも世の中にはもっと凄い、くるま好きな人がいました。 ・・・つづく







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